【秘書】女子トイレの前まで私を探しに来る【20代後半】

年齢：20代後半
職種：秘書

私が20代後半の頃、飲食業界の副社長秘書をしていた時の事です。当時の私にとっては、秘書業務という仕事は、大変満足する、好きな仕事ではありましたが、仕事と、自分の時間との区別が出来なくなってきた時に、もう辞めたいと思いました。

入社前から、その頃は、まだ副社長であった上司の事は、噂で、やんちゃ坊主で、かなりの傲慢さを持っているから、業者や周りへの気遣いが大変だと聞いていたので、それなりの覚悟をしていましたし、意外と面白いかも。と呑気に構えていたのですが、実際は我儘で、自分の思うようにならないと担当の部下を大勢の前で平気でけなす人物でした。

というのも、副社長という地位は、一代で業界の大手としてのし上がってきたやり手の社長の一人娘を妻として得たものでしたから、殆どの事を娘婿に任せてきだした社長は、余程の事がない限り、口出しもせず、ほぼ副社長の天下という感じの会社となっていたので、部下に嫌味を言った所で、誰もそれをいさめる人はいないという状態でした。

そんな中でも、私が仕事に精を出す事ができたのは、自分の望むデザイナーという仕事までさせてくれるようになったからでした。秘書との兼務は大変でしたが、私にとって興味ある初めての世界で自分なりに一生懸命両立したつもりでした。

しかしながら、仕事が立て込んでいてトイレにも満足にいけない私が、やっとトイレに行けば自分の思いつきの事でも、女子トイレの前まで私を探しにきて、大声で名前を呼んでデスクに戻れとわめく事が副社長が会社に居る時間は繰り返し続き、とうとう日常化して行きました。

やっと、勤務を終えて帰宅しても仕事関連での電話は夜間でもお構いなしでしたし、ひどい時はご自分が飲みにいっている店名を申されて、今からでも来るようにという連絡も数多くありました。疲れきった体にムチ状態で、又、２時間以上かけて、副社長の指定店に行く事もありましたが、結末はいつも同じで酔った副社長を車に乗せて、これまた２時間程度かけてご自宅に送り届けなければなりませんでした。

偶然にも、奥様と私が同じ学校の先輩と後輩の関係だと分かり、奥様とは副社長の愚痴を言い合える仲となったのが唯一の慰めでしたが、そのうち私の体力も精神力も限界に近づき、とうとういつもの夜にかかってくるお迎えの場所に行くのを断ってしまいました。

その翌日から、数日間、私への風あたりはひどいもので、嫌味だけではなく、仕事に関しても、承認印をついてくれずに困ったものでした。今、当時をよく知る人に会うと、副社長は社長になったものの、会社としてはかなりの規模の縮小をしだしているようです。

どのような人でも、自分の力を出したい、もっとのばしたい、会社に貢献したい。等と思うものですが、辞めたいと思う気持ちを持たせるか否かは、巡り逢った上司の資質も大いに関係してくると思うのです。