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【書店】中途社員は入社後翌日即店長、新入社員は三日目にして発注の責任者【20代後半】

      2014/11/29

年齢:20代後半
職種:書店

前職は物販業界(書店)に勤めていました。勤務年数は三年ほどです。そもそも斜陽産業であることは承知していたのですが、勤務している方々の魅力に惹かれ、何より自分が本好きであることも手伝って入社しました。

日々本に触れることはとても楽しく、教養深い方も多かったので地味な業界にも関わらず刺激的な日々を送ることができたと思っています。そんな書店を退職するに至った理由は主に二つです。

1.売上と書店の『質』の問題
ご存知の通り、現在紙の本の売り上げは衰退の一途を辿っています。amazonの台頭や中古書店の乱立により、書店で新刊を手に入れる必然性は薄れ、更には電子書籍の存在で毎年多くの書店が閉店に追い込まれていることはしばしばニュースでも取り上げられます。

私の勤める書店も例外ではなく、売り上げは右肩下がりで各店の店長は日々売上アップのための施策を手を変え品を変え提示する毎日でした。

当時、私の勤める店舗の売り上げの大半は雑誌とコミックス、そして文庫本でした。同時に歴史書や哲学書、社会科学書、自然科学書といった教養本も多く取り揃えており、小さな書店では望めない知的な出会いを求める多くのお客様に愛されていたのです

しかしながら出版不況の現在、売り上げアップは至上の命題です。そして売り上げを最も効率的に、かつスピーディにアップさせる手段は『コミックスの売り場拡大』に他なりませんでした。

たとえば国民的海賊漫画の最新刊が発売となれば、関連するグッズや既刊を揃え、店舗の入り口を独占してでも訴求する。スペースが足りなければ堅苦しい文学評論や哲学書を店の奥へ、隅へと押しやり、ディスプレイやゲーム機のPVを流してでもアピールする。

ただそれだけのことで教養書一か月分の売り上げを一日で稼ぐことすら可能だったのです。それは決して悪いことではありません。ただ、前述の知的な出会いを求めるお客様(中高年層、大学院の教授・学生など)は教養書の品ぞろえが悪くなると潮が引くように離れてしまいます。

そしてこれら教養書の版元は売り上げの悪い書店に対しては発送を渋るケースも多く、ますます本の入手が困難になり、ますます教養層のお客様は離れます。

するとお客様の単価がどんどん下がっていくのです。書店の売り上げは購入単価×客数で決まるため、コミックや映像化した文庫本の売り上げのみに頼っていると客数に対する売り上げはどんどん下がります。

すると労働分配率も悪くなり、結果として長期的な経営は苦しくならざるをえません。何より、それでは店の独自性が薄れ、大手書店やアニメ専門店などが出店した場合に太刀打ちができなくなります。

2.人件費とスタッフの『質』の問題
売り上げが落ちた時、売り上げそのものを補強する以外にも利益を生む方法はありました。それが人件費の削減です。

各店で退職する社員の補充をせず、日中はアルバイトや契約社員だけで店を回し、責任者不在にする。夜だけは責任者を置くが、アルバイトは数名だけにする。某飲食チェーンでも問題になった『ワンマンオペレーション』に近いです。

これのメリットは速効性が高く、社員の踏ん張り次第でいくらでも利益を生み出せることで、実際にサービス残業や休日出勤は全店的に当たり前の状況が続いていました。

当然、後に続く者が現れません。中途社員は入社後翌日即店長、新入社員は三日目にして発注の責任者、なんてことはザラです。アルバイトに出入金管理を任せたり、棚の管理まで任せるほどに人件費は搾り取られ、その利益が会社を支えてきました。

次々に人が抜け、それを補う人物が現れず、教育できる人物も残らず、という状況があっという間に全店へと広まり、私が退職する頃には各店のフェアはもちろん発注書まで本社のブレーンが作成する状況でした。

似た業界の経験者なら分かると思いますが、会社の資金を使う発注にはある程度のノウハウや経験が必要です。それらの経験値が次世代に継承されず、『とりあえず映像化の文庫を片っ端から』であるとか『週刊マンガ誌の作品を適当に』といったやり方がまかり通ればいずれamazonどころかコンビニにすら負けてしまうのが当然です。

こういった状況に対する打開策を見つけようとせず、ただ目の前の利益を追う経営層のスタンスに私はミスマッチを覚え、退職いたしました。

結局のところ、退職する頃には本を読む喜びを分かち合える人材が少なくなっており、その状況に嫌気が差していたのだと思います。今でも本はよく買いますが、古巣に足を運びたいとは思いません。棚を少し見ただけで、本好きが作った棚ではないと分かってしまいますから……。

 - 辞めた理由 ,

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