【建築】労働基準法第二十条をちらつかせて、30日分の給料を勝ち取りました【20代後半】

職種：建築設計
年齢：20代後半

第一希望の小さな設計事務所に内定をもらいました。入社してみて意外だったのが、3人同時に採用されていたことです。元々事務所規模は社長含め4人。そのうち1人が退職するとのことでの募集だったと聞かされましたが、それにしても4人の事務所に3人採用は多いのではないか、と危惧しておりました。

同時入社の3人は、私（アラサー、経験者）、A君（20？くらい。新卒）、B君（20代前半。4年制大学卒業後関連企業に一度就職したが数カ月で退職。第二新卒）です。

さらにはその3人の他にかねてから縁のあった個人事業主の設計士を一人、雇用契約がどうなっていたのかは知りませんが同事務所内で仕事をさせていました。

社長は気さくで面倒見もいいように思えましたが、退職すると言う女性について引継ぎをしていた私は裏の面を聞かされることになりました。
セクハラ、気分屋、依怙贔屓が横行するワンマン経営者。

それが彼女の見てきた社長像です。彼女だけでなく、もう一人長く営業を担当する男性からも施工を担当する大工さんからもあまり人望はないようでした。

事務所内にいるときには卑猥な話が飛び交います。20代の若い女性が一番のイジラレ役だったようですが、彼女は若いながら人間ができていたのか、穏やかにうまく調子を合わせていました。私はとりあえずあまり聞かない、関わらないように仕事に熱中するふりをしていましたが内心は不快でした。

私が入社することになったのはハローワークの求人からですが、他の2人も同じだったようです。「トライアル雇用」という制度があるそうですが、ことあるごとに社長はその制度の話を私たちにしました。

「君たちは『トライアル雇用』だからね、3か月間はハローワークから補助があるから」と言われていましたが、私は「採用は『お試し』のつもりか？」と不信感を持ちながら聞いていました。3ヶ月が過ぎたら、本命以外をクビにするつもりでは、と。

果たしてその通りになりました。歳の暮れも押し迫ったころ、私達3人のうち残るのは1人だ、とのうわさが小さな事務所の中を吹き荒れました。
ある日、2人のうちのA君が私に言いました。「オレ、社長に嫌われてるからなー。クビになるとしたらオレですよ」というA君は、下ネタで一番社長と絡んでいる男の子でした。

私は彼のことが嫌いでしたが、大人として慰めるつもりで「好き嫌いで人を雇ったりクビにしたりするのは経営者として大人げない。社長がそんな人だというものではない。もしもそうだとして、嫌われているとしたら私だ（だから元気を出せ）」と言いました。

仕事納めの前日、就業間際に私達3人は一人ずつ呼び出されました。ある程度予想はしていましたが、私は解雇を申しわたされました。その理由が「普段の（卑猥な）会話にも混じろうとしないし、協調性がない」いや、真面目に仕事してただけですが？

「君は『自分は嫌われているからクビにされる』とAに言ったそうではないか。私をそんな人間だと思っていたのか」それ、言ったのはA君ですけど！

こちらも辞めたいと思っていたところだったのですが、おとなしく解雇などされてたまるものですか。翌日は午前中半休を取り、労働基準監督署に行って相談してきました。

労働基準法第二十条（解雇の予告）という条文があります。少なくとも30日以上前に予告をしなければ解雇してはならない、また解雇する場合は30日分以上の平均賃金を支払わなければならない、というものです。

その日が仕事納め、つまりクビとなる日ということですが、終業時刻以降は社長とのひざ詰め談判です。あくまでも「自分は退職を希望しているわけではない」と主張したうえで労基署で相談してきた旨を話し、法第二十条を「もちろんご存知ですよね？」とちらつかせて、30日分の給料を勝ち取りました。

雇用―被雇用の関係にあっても「お試し（トライアル）」は許されることではありません。トライアル、または試用期間の意味をはき違えていたのでしょう。それにしても今思い出しても腹が立つ。社長にせよ、A君にせよ（3人のうちで残ったのは一番仕事のできないA君でした）。

あんな社長の下で長く勤めなくてよかった、とせいせいしました。