【事務】当然の見返りとして少なくとも今より少しくらいは頑張って勉強してくれよ【20代前半】

年齢：20代前半
職種：経理事務

私が勤めていたのは、焼肉チェーン店を展開する会社の本部での経理事務です。入社した当時はまだ社員数が少なくて、OLはたった6人でした。上司もとてもOLに優しくて、特に会長がOL全員をいつも気にかけてくれました。もとよりOLの面接は全部会長が行いますし、自分で言うのもなんですが、ほぼ会長の趣味による人選だったのではないかという感じです。

OLの人数が少ないおかげでみんな和気あいあいとしてとても仲良しでした。昼食も全員で一緒にとり、仕事を教える時も叱りつけることなんて一度もなく、誰も穏やかな雰囲気を壊す人がいなかったのです。ところが焼肉店がドンドン増えて、本部もそれに従って大きくなっていきました。

事務所が広くなり数も増えて、内線や外線電話で話す同じ社員の人の顔をほとんど知らない…という状況に、あっという間に変化していました。会長も私たちの事務所にほとんど出社しなくなり、上司も次々と異動や引き抜きでメンバーチェンジしていきました。

昨日まで長年私たちがやり続けてきた経理のやり方が、ある日突然やってきた上司の指示によって全く違うやり方に変えられたりする事もしばしばありました。ずっと仲良くやってこれた上司が東京支部へ転勤になり、久しぶりに本部へ来た時、以前とは別人のように私たちにそっけなく冷たい態度をとってきたりもしました。何とも言えないショックと強烈な淋しさがありました。

次第にOLも可能な限りあちこちへ異動になりました。名古屋支部へ新婚間もなく夫婦(社内結婚)で異動になった同僚が、環境の変化や通勤のしんどさも祟ったのか、せっかく授かった赤ちゃんを流産してしまったという事もありました。

私が入社して3年足らずで全く社内は変わっていました。以前のように少人数で和気あいあいと仕事が出来ていた頃がとても懐かしく思われました。会社はとても大きくなったのですが、正直どちらの方が私たち社員にとって幸せな状況なのか、その答えも分からなくなっていました。

そして結局私が退社を決めた決定的なことが起こったのです。私の実家は精肉店です。すっかり人通りの少なくなった商店街で細々と経営していました。ある時私は専務に呼ばれ会議室でとある話を持ちかけられました。

「キミの両親に””ウチの焼肉店に肉を納めないか””と聞いてみてくれ」と言うのです。会長からの提案です。私は経理なので、精肉をいくらで店舗が仕入れているか全て把握していました。とてもじゃないですが実家の取引する卸問屋の値段では高くて話になりません。

それに両親だけで細々とやっている店なのに、各店への配送手段すら講じる余力もないことは娘の私でも即座に判断出来ました。重々断ったのですが、どうやら会長としては「私の実家はもろ手で喜ぶであろう」という感覚しかなかったようなのです。

当然仕入値に関しても、会長としては「大きなビジネスが舞い込むのだから、当然の見返りとして少なくとも今より少しくらいは頑張って””勉強””してくれよ」という考えだそうでした。私は専務に丁重に断わり、両親には話があったことすら伝えませんでした。

そして、的違いであったとは言え、会長の「懇意」を蹴った以上、もう会社に居づらくなることは必至だと思い、退社を決心しました。どこかに属して勤めるという時、どんな仕事であるか・給料がいくらであるか、という事ももちろん大事でしょうが、やはりいつも1番自分の身近にいて一緒に働く人たちが自分と楽しく働ける人達であることがとっても重要なんだなと思っています。