【ホテル】俺のこと嫌いなのはわかるが俺もおまえが嫌いだが仕事だからしかたねぇだろ【20代前半】

職種：ホテルレストランスタッフ
年齢：20代前半

わたしは当時、ホテル専門学校をまずまずの成績で卒業して、即戦力として近隣では有名なシティホテルの料飲サービス部へ正社員として入社しました。

アルバイトからの登用が主な正社員採用ルートであるこの業界で、同期入社は9人と少なかったが同様の専門学校からの採用だったこともあり、学生時代からの学友とそのまま入社したような感覚でした。9人全員仲が良く、同じく即戦力として重宝された世代だったと、今でも言われています。

現場レストランは4店舗あり、それぞれに配置されて日々の営業に追われ、繁忙期には休憩もまともに取れない期間もありましたが、一緒に頑張る同期や先輩上司に囲まれて、やりがいのある仕事でした。

入社から1年が経つころ、尊敬していた上司や優しかった先輩方や同期たちが、結婚や留学や独立など理由はそれぞれでしたが、次々に辞めていってしまった時期がありました。

休憩も短く、残業も多く、業務自体もハードだった環境で、それでも頑張れたのは、共に働く人々のことが好きだったから、尊敬し学べる対象に囲まれていたからだったのに、頑張れる理由がどんどん無くなっていきました。

そして入社から3年目、わたしは1店舗を任されるようになりました。決して実力が買われたわけではなく、先輩や上司が辞めていってしまったがために、ほかに適任がおらず、だるま落とし的に仕方なくわたしが選ばれただけでした。

スタッフはたった3名、完全予約制の高級料亭と銘打ちながら、中身はスカスカの人員不足。周囲の他店舗から人員を回してもらいながら、わたしが指示して営業する。予約や顧客、物品、飲料などの管理はすべてわたしの責任となり、慣れない業務は前任者からの引継ぎもままならないまま、手探り体当たりの状況でした。

4店舗を統括する支配人は、秀でたサービス技術と巧みな話術を駆使する素晴らしい上司でした。入社当初から雲の上の存在でした。しかしわたしが1店舗を管理する立場になってからというもの、わからないことや迷ったり悩んだりしたことはすべて、直接その支配人に指示や許可を仰がなければならず、尚且つ支配人は常に忙しく動き回っている立場の為、日々のお伺いのタイミングを計ることは容易ではありませんでした。

そうして、そんなわたしの存在が煩わしくなったのか、いつからか支配人はわたしに冷たくなり、わたしの後輩にわたしの悪口を日常的に聞かせたり、何かミスを犯せば大声で怒鳴り散らし、周囲の物を叩いたり蹴ったりして威嚇するような態度に豹変しました。

もともと自分の過去の悪行や素行不良話を武勇伝で語り散らすようないわゆるヤンキー上がりの方だったので、その恫喝ぶりにはいつも怯えていましたし、それはわたしが休みの日にも何かあればすぐに電話で怒鳴りつけられるような日々になりました。

「おまえ名前なんだっけ」「なんで俺に報告しねぇんだ」「俺のこと嫌いなのはわかるが俺もおまえが嫌いだが仕事だからしかたねぇだろ」「適当な仕事しかしねぇで休んでんじゃねぇよ」「使えねぇ」「辞めろ」「死ね」そんな罵詈雑言を大声で怒鳴り散らされ続けて、周囲に相談してもみんな矛先が自分に向くことを恐れて、表立っては助けてくれませんでした。

助けてくれていた方々からは、労働組合を使って訴えることを強く勧められましたが、支配人は素行不良の為、訴えたことがばれたら何をされるかわからないという不安に駆られ、泣き寝入りの形ですぐに辞めました。

いまでもそのひとの写真が地域の雑誌などに掲載されているのを見るだけで動悸がします。他にも同様の被害を受けて辞められた方がわたしの前にも後にも少なくなかったそうです。